『舞いあがれ!』のクライマックスが水曜に来る理由

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『舞いあがれ!』のクライマックスが水曜に来る理由

『舞いあがれ!』のクライマックスが水曜に来る理由
…非常に丁寧に日常が紡がれていく、福原遥主演のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合、月~土曜午前8時ほか)。ドラマチックな展開でグイグイ惹…
(出典:田幸和歌子)

   🛩舞いあがれ!

クライマックスが水曜に来る理由

非常に丁寧に日常が紡がれていく、福原遥主演のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合、月~土曜午前8時ほか)。 
ドラマチックな展開でグイグイ惹きつけるのではなく、登場人物一人一人の心情や背景を繊細に描く本作において、注目すべき点の一つに、1週間分の構成の妙がある。
それは、水曜にクライマックスが来る斬新さだ。
 朝ドラの場合、1日15分×週5本(かつては6本)×半年という圧倒的な物量をこなすため、大まかな半年分の最初に年表が作られ、そこから週単位でプロットが作られていく中、大きな盛り上がりは木曜から金曜(かつては金曜から土曜)に起こり、週終わりに解決するパターンが多い。  
こうした傾向について、『あさイチ』の「朝ドラ受け」で、博多華丸が当時放送されていた『半分、青い。』を例に「木曜日にストーリーが動く」=「ムービングサーズデー」と表現したのは印象的だった。
 それに対して、『舞いあがれ!』の場合、物語がクライマックスを迎え、収束→次の物語が芽吹き始めるのが水曜日というケースがある。
 特に多くの視聴者が驚かされたのは、第6週だ。
さらに、7週では貴司が突然姿を消し、会社を辞めていたことが発覚。
心配した舞が電話すると、五島にいると言い、舞と久留美が五島に行くのが水曜(11月16日)だった。  
 そこで貴司は2人に初めて苦しい心情を吐露。
「ほんまの自分の生きていける場所がどこかにあるかもしれん」「その場所、探したい」といろいろな場所へ行き、歌を詠むこと、両親を説得する決意を語り、久留美は幼い頃に離別した母に会いに行くこと、舞はパイロットを諦めないことを心に決める。
 そこから木曜、金曜と、それぞれの物語が動き出すが、なぜこうした構成にしたのか。
熊野氏は言う。 
「人生には幸せな瞬間もあれば、うまくいかずに打ちひしがれる瞬間もある。
人それぞれにそのタイミングは違います。幼馴染み3人は、それぞれの境遇は違いますが、常に変化していきます。いい時も悪い時も、互いに支え合うことができる素敵な関係の3人を描いていきたいなと思いました。
今後も3人にはそれぞれ良いこと悪いこともおきます。その時、互いにどう関わっていくのか見守っていただければと思います」 一見、ヒロインが羽ばたく、輝く瞬間は、物語のクライマックスに見える。
しかし、『舞いあがれ!』の場合、その後にさらに描きたいものが待っている。 
それは他の人物についても同様で、人生の中で大切な数々の眩しい「瞬間」を描きつつも、そこから何を感じ、何を得て進むか、「舞いあがる」一瞬に至るまでの努力の積み重ねを大事にしているからこそ、週半ばの水曜に展開上のクライマックスが来るのだろう。 
『舞いあがれ!』において、物語の終わりと新たな始まりという重要な意味を持つ水曜日に、今後も注目したいところだ。
  
エンタメライター/編集者
    田幸和歌子

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