知ってた?『青木まり子現象』

知ってた?『青木まり子現象』

知ってた?『青木まり子現象』



書店に足を運んだ際に突如こみあげる便意に対して与えられた呼称である。

この呼称は、1985年にこの現象について言及した女性の名に由来する。

書店で便意が引き起こされる具体的な原因については、渋谷昌三によると2014年の時点でまだはっきりとしたことはわかっていないという。

そもそもこのような奇妙な現象が本当に存在するかどうか懐疑的な意見もあり、一種の都市伝説として語られることもあるが、一方で生理学や心理学の知見をもってこの現象のメカニズムを解明しようと試みる識者もいる。

書店にいることで突然便意が自覚されるという一連の過程は、少なくとも現在の医学的観点からは単一の病態概念から説明できるものではない。

いくつかの考察によるとこの現象は、仮にその実在性が十分認められるにしても、(例えば「青木まりこ病」などといった)具体的な疾患単位とはみなされにくい概念であるという。

その反面、この現象について言及する上で、既存の診断学や病理学における医学用語を適用する識者(特に臨床医)が少なからずみられるのも事実である。

本項でも便宜上このような立場に倣い、表現には既存の医学用語を準用する。 

管理に関するコストや衛生上の問題、落書きや万引き、および成人向け雑誌の持ち込みなど防犯上の問題から、トイレを設置しない、あるいは設置するにしても敢えて利便性の悪い場所に設置している書店は少なくない。

どんなに小さな喫茶店にもトイレはあるのに対し、比較的大きな書店でトイレがない場合があるのは、「書店は長居するところではない」という前提があるからと話す書店関係者もいる。 

一方で書店におけるトイレは経営上重要な意味をもつという意見もある。実業家の稲葉通雄によると、とりわけ郊外型の書店などでは、トイレを清潔に保つだけで集客状況が変わってくるという。

書店の常連客の中には、来店のたびにトイレを利用する者も存在する。

『本の雑誌』の取材班は、ある書店の店員に対する聞き取り調査から、この書店のトイレの利用者数は1日80人と算出し、トイレの場所のわかりにくさから、80人のほとんどが書便派であろうと推定している。

実際、書店で切羽つまった来客は非常に多いらしく、書店員がトイレの場所を尋ねられるのは日常茶飯事であるという。

ようやくたどり着いたトイレも同様の客で行列ができていることも珍しくない。このような状況から青木まりこ現象が紹介されると、出版業界でも大きな話題となったという。

古書店街である神保町(千代田区)の状況はかつて凄惨たるありさまで、「神保町はトイレ地獄だ」という落書きがみられたり、故障のため封鎖中のトイレを強引に利用して下の階を水浸しにした利用者も存在したという。

千代田区は2003年より「交通バリアフリー基本構想」を実施し、神保町も公衆便所が充実した。トイレを設置したコンビニも増えたことから、事前の情報収集を怠らなければ比較的安心である。

書店利用者に対するアンケート調査でも書店でいかにトイレが求められているかを裏付ける結果が出ている。

これは、書店の活性化策を探るための一環として2012年春に実施された調査によるものである。

この調査を実施した日本出版インフラセンターによると、「今後書店で利用したいと思うサービスは」という問いに対する複数回答で「トイレの利用」(約38%)が、「ポイントカード」(約68%)、「バーゲン」(約51%)に続き3位に入ったという。


◆「青木まりこ」本人をめぐって

命名の由来となった投稿者名「青木まりこ」は実名とされる。

『本の雑誌』発行人の目黒考二によると、青木が編集部に寄せたハガキは、差出人名が一度消された後、再度記入された形跡があったという。

一度はためらった実名を結局は思い切って書いてしまったところにユーモラスを感じたのだと目黒は振り返っている。 

青木まりこは、親友の一人がこの症状を訴えたのを聞いた当初、この現象について半信半疑だったらしい。しかし親友の体験談を聞いてまもなく同様の症状が自分にも出現したという。

当初はとまどいもあったようだが、特段の悩みや病識などはなく、なぜこのようなことが起きるのだろうという純粋な疑問として雑誌に投稿したようである。 

1985年以降も青木は、同編集部に複数回取材を受けている。1985年当時、書店に長時間滞在する機会が多かったのは、青木自身も編集にかかわる仕事をしていたからだという。

件の体験談が話題になって間もなく、子供向けの百科本を扱っていた編集者が、トイレ関連の担当を青木に依頼したというエピソードもある。

結局この依頼はすぐに断ったとのことである。 あまりに大胆な発言が実名で雑誌に掲載されたことから、親戚一同で大変な話題となり、青木の母は「嫁入り前の娘がなんという恥ずかしいことを」と激怒した(その後和解した)。

実際、記事が掲載されて以降しばらく恋人ができなかったらしく、数年後の同編集部の取材時点で青木はまだ独身だった。 

青木まりこはその後結婚したが、「青木」という同姓の男性と結婚したため、結婚後も本名は「青木まりこ」のままである。

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