「吐いたら罰金2万円」飲食店の張り紙、本当に支払う必要あるの?

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「吐いたら罰金2万円」飲食店の張り紙、本当に支払う必要あるの?

お酒の飲み過ぎで、吐くなどして失敗することがあります。居酒屋には「床やトイレを汚してしまった場合、現金を請求する」と張り紙で知らせているところもあります。

30代会社員タカシさん(仮名)が最近訪れた居酒屋もそうでした。

<店内での嘔吐は、他のお客様の迷惑且つ後のお客様をしばらくお迎えできなくなる為、損害賠償として金2万のお支払いを請求させて頂きます>という注意書きが掲示されていました。

スマートに飲んでいたタカシさんが粗相をすることはありません。しかし、壁に貼られた注意書きを眺めながら、

「店の言い分ももっともなことだけど、もしも吐いて店を汚してしまったら、本当に2万円を払わなきゃいけないのかな」

などと、浮かんできたモヤモヤする思いをビールとともにグイッと飲み干したのでした。

もちろん店内で吐くほど飲まないことが一番ですが、このような請求は本当に有効なのでしょうか。尾崎博彦弁護士に聞きました。

●お知らせを店に掲示することで「契約」が成立するのか

——「店内で嘔吐したら、2万円を支払ってもらう」といった張り紙が掲示されていた場合、吐いて店を汚した客はその金額を支払わないといけないのでしょうか

いくつかの答えが考えられますが、一つの考えをご紹介します。

まず、店のお客さんは「店内で嘔吐した場合には2万円を支払う」という張り紙の内容について、店と約束(契約)したかどうか考えていきます。

契約が成立するには、客がお知らせの内容を認識したうえで承諾することが必要です。しかし、誓約書を書くのであればともかく、単にその張り紙を見ただけでは承諾したことにはなりません。見落としていた人には効果は生じないという不合理な結果となります。

以上のように考えると、張り紙がされているだけで、お客さんとの間で「吐いたら2万円支払う」という約束(契約)が成立していたと考えることはできず、張り紙を根拠に店が直ちに2万円を請求できるとはいえないと思います。

——では、この張り紙は「特に意味がないもの」なのでしょうか

トラブル解決の観点からすると意味がないとは思いません。

店で粗相をした客には、損害賠償責任があると考えられます。店側としては張り紙によって、一応の損害額の基準を示したか、あるいは請求額の上限を示したと理解できるように思います。

店側に想定される損害は、(1)後始末にかかった費用、(2)汚されたことで他の客が入れなかった営業上の損失などが考えられます。

(1)はクリーニング代などの実費が考えられますが、(2)は実際に店側が損失を算定するのは労力もかかって現実的ではありません。

そこで、張り紙によって、店側が損害額(の上限)を決めたものと考えることができます。

こういった張り紙がされていて、客がその内容を承認するのであれば、2万円を上限とする損害賠償についての合意がなされたものとしてトラブル処理するのは妥当と考えられます。

このように考えるならば、仮に店側にそれ以上の損害が出たとしても請求できません。もちろん、客側としても「2万円も支払うのはいやだ」と考えるならば、張り紙の内容を承認する必要はありませんが、店側に損害が生じている以上、後日請求がある可能性も考えて、張り紙の内容を承認することも不合理とはいえません。

そうすると、2万円程度の「迷惑料」が相場として妥当かどうかはともかく、こういったトラブルを迅速に処理するために、客が負担すべき金額としては一応合理的ではないかと考えます。

一方で、仮に張り紙に高額な「5万円」とか「10万円」といった記載がされているなら、およそそのような金額を一般のサラリーマンが持ち合わせているとは考えにくく、張り紙の内容が、その場でのトラブル解決を目指すと言う趣旨とは思えません。

よって、これ自体は合理的とは考えにくく、張り紙の内容に従う必要も理由もありません。あくまでも、客の飲みすぎ防止のための警告以上の意味はないと考えます。

【取材協力弁護士
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URLhttp://ozakilawoffice.jp/

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(出典 news.nicovideo.jp)

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