ウクライナ中立化と親露二共和国独立承認で決着か

ウクライナ中立化と親露二共和国独立承認で決着か

ウクライナ中立化と親露二共和国独立承認で決着か

石油・石炭禁輸に米国民は反発

 ジョー・バイデン大統領3月8日ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表、大統領令に署名し、即日発効させた。

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 英政府も同日、ロシア産原油の輸入を停止すると発表した。年末までに段階的に削減する。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2022/03/08/remarks-by-president-biden-announcing-u-s-ban-on-imports-of-russian-oil-liquefied-natural-gas-and-coal/

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2022/03/08/background-press-call-on-announcement-of-u-s-ban-on-imports-of-russian-oil-liquefied-natural-gas-and-coal/

 米国は、8日からロシア産の石油、天然ガス、石炭や関連製品の新規購入ができなくなった。

 米欧はこれまでウクライナに侵攻したロシアへの制裁について、燃料価格などの高騰につながりかねないとの懸念から、エネルギー産業を対象から外していた。

 歴史的なインフレが米国を襲っているとはいえ、連日のように報じられるウクライナ避難民や破壊される街並みの映像にバイデン氏もこのままではいかなくなってきた。

 ウラジーミル・プーチン指揮の下、どこまでも手を緩めぬロシアウクライナ侵攻で攻勢を強める現状を踏まえて追加制裁が必要と判断した。

 その直後、米国内のガソリン価格は急騰し、米市民の日常生活にも影響を及ぼし始めた。

https://www.latimes.com/california/story/2022-03-08/the-price-for-supporting-ukraine-is-expensive-gas-and-angelenos-arent-sure-how-much-more-they-can-take

 ロシアの主要な外貨獲得手段であるエネルギーの輸出を制限して経済を追い込む狙いがあるのだろうが、米市民にとってウクライナ戦争は「対岸の火事」。

 同情はするが、できることは対ロ経済制裁と対ウクライナ軍事援助、そして口先だけ(?)の対ロ非難だけ。

 これで情勢が大きく変わる気配はない。少なくとも、米国民の34%は「ウクライナの問題だ」と答え、米軍の投入には63%が反対している。

 この現状認識は微動だにしない。

https://fivethirtyeight.com/features/americans-are-still-unsure-how-the-u-s-should-respond-to-the-invasion-of-ukraine/

 中間選挙を8か月後に控え、バイデン支持が上昇するのはウクライナ政策ではない。

 上下両院選では共和党が優勢という玄人筋の予想が支配的だ。

 しかも、ドナルド・トランプ大統領と支持層の岩盤である超保守層と宗教保守・エバンジェリカルズはロシア大統領ウラジーミル・プーチンを支持している。

 不人気バイデン氏やリベラル派、人道的な正統派国際主義を掲げる主流メディア(最近では、保守派は「Corporate Media」=企業メディア=と呼び始めている)がウクライナ国内でのロシアの暴挙を非難しようとも、米国は世界に誇る軍事力を使えないでいる。

 かつての「世界の警察官」の面影はどこにもないのだ。

意味ありげなゼレンスキー発言

 ウクライナウォロディミル・ゼレンスキー大統領ロシアの空爆を阻止する「No-fly Zone」(NFZ=飛行禁止空域)の設置を北大西洋条約機構NATO)に求めてきたが、NATOは頭から拒否している。

https://www.youtube.com/watch?v=r6xZsI9njeo

 その理由は「ヨーロッパ全体に戦場が拡大する危険性がある」。つまりNATO加盟国でもないウクライナを守る義務はないという理論だ。

 ウクライナの現地状況はどうか。すでに200万人のウクライナ国民が国外に避難しているが、これでロシアウクライナ国内での無差別攻撃を中止するとは、おそらくバイデン政権も米国民も全く思ってはいない。

 ゼレンスキー氏もそんなバイデン氏の本音は見抜いている。

 ロシアとの停戦協議でウクライナ側交渉団を率いるミハイロ・ポドリャク大統領府顧問は3月8日、自国メディアに対し、ウクライナの「安全の保証」が確約されることを条件に、北大西洋条約機構NATO)への加盟を断念することもあり得るとの認識を示した。

 戦闘被害が拡大する中、停戦合意実現のため、ロシアが要求する「中立化」の条件には柔軟に対応する姿勢を示したわけだ。

 ポドリャク氏は、「NATOは、ウクライナの加盟はないと公言している。いま重要なのはウクライナを守ることだ」と語り、対ロ停戦交渉の場で何らかの法的拘束力のある「安全の保証」をロシア側から取り付ける必要性を強調した。

 ポドリャク氏の発言に先立ち、ゼレンスキー大統領も米ABCテレビインタビューで、「NATOにはウクライナを受け入れる覚悟がないとかなり前に理解した」と述べ、NATO加盟をあきらめる考えを示唆している。

https://abcnews.go.com/US/video/zelenskyy-interview-david-muir-reporting-abc-news-exclusive-83309456

ウクライナはすでに白旗を振り始めた」(主要シンクタンクの外交問題専門家筋)とみていいのかもしれない。

 ロシアは、ウクライナ東部の親露派支配地域(ドネツク人民共和国=人口230万人、ルガンスク人民共和国=人口147万人)の独立承認も停戦条件としている。

 ゼレンスキー氏は「ロシアしか承認しない偽の共和国だ」と拒否する考えだが、妥協策を見出すため協議する姿勢も示した。

 刻一刻とロシア優勢で動くかに見えるウクライナ情勢について、在米東欧ジャーナリストは筆者にこう指摘する。

「それにしても米国は弱くなったものだ。冷戦時代には米大統領の一言がソ連に与えるインパクトは大きかった。それで世界は動いた」

「今バイデン大統領が何を言ってもロシアプーチンは平気だ。足元を見ている。バイデンという高齢のひ弱に見える大統領ということもあるだろうが、米国自体が縮んできたからだ」

ロシアウクライナとの仲介にトルコイスラエル名乗りを上げること自体、米国のパワーが地に落ちたといってもいい」

「これは米国の政府が弱くなっただけではない。米国民が遠い世界の争いにはかかわりを持ちたくないと内向きになってきたからだ」

「関係のない戦争に介入して米軍の若い兵隊を死なせるのは御免被るという米国人が圧倒的に増えてきたのだ」

「これを『アフガニスタン後遺症』(Afghanistan Syndrome)と呼ぶ学者もいる」

https://www.wilsoncenter.org/blog-post/afghanistan-syndrome-and-us-ukraine-relations

米国内の対露スタンスはすでに複雑骨折

「今回顕著なのは、ウクライナに侵入したロシアけしからんとデモをやっているのはウクライナ系を中心とした白人ばかりだということ」

「黒人やヒスパニックアジア系はほとんどいない。『遠い東欧の白人同士の争い』には興味も関心もないのだ」

ウクライナ侵攻の次は中国による台湾侵攻が外交専門家たちの格好の論争テーマになっているが、米国内で台湾系米人が騒いでいる話は聞いたことがない」

「つまり、ロシアウクライナの戦争は米国にとっても遠い世界のスラブ民族同士の領地をめぐる内輪もめ」

「弱い者を応援する『判官贔屓(びいき)』で米メディアは書き立てるが、かつて国際主義を錦の御旗にしてきた共和党内の外交専門家の中には、ウクライナなどはNATOに入れずに中立国家にさせておけばいい、と論ずる者もいるくらいだ」

トランプ氏の言う『プーチン礼賛』の背景にはこうした東欧への不介入スタンスがある。しかもこれをトランプ支持基盤のエバンジェリカルズや右翼武闘派グループが提唱すらしている」

「外交には無頓着なエバンジェリカルズがなぜプーチンロシアを支持するのか、答えは極めて単純だ」

「今やロシア共産主義国家ではなく、白人優先主義を信奉するキリスト教ロシア正教)国家だからだ」

「白人エバンジェリカルズはプーチン支持」

 なぜ、エバンジェリカルズはプーチンを支持するのか。ペンシルベニア大学で宗教学とアフリカ学を教える黒人女性歴史学者、アンセア・バトラー教授がMSNBCサイトに寄稿した論文が注目されている。

 バトラー氏はこう指摘している。

一、先頃開かれた保守政治行動会議(CPAC)で秋に上院選(デラウエア州)に出馬するローレンスウィズク氏(エバンジェリカルズが推薦・支援)は、「ロシアキリスト教ナショナリスト国家だ。ロシア正教を事実上の国教としている。私にとってはプーチン氏のキリスト教価値観の方がバイデン氏の価値観よりも近い」と公言していた。

二、エバンジェリカルズ・テレビ伝道師、パットロバートソン師は、「プーチン氏のウクライナ侵攻は神が命じられた神聖な計画だ」とまで言っている。

三、エバンジェリカルズの指導者、フランクリン・グラハム師はウクライナ侵攻の前夜、「プーチン氏のために皆で祈ろう」と呼びかけている。

 バトラー教授は、これらエバンジェリカルズの指導者たちが重視する「米国の建国時に存在した白人キリスト教徒が堅持していた家族価値中心主義」を(共産主義から脱皮した)ロシアは遵守しているからだという。

「米国が多様化する中で米国のリベラリズムは家庭価値中心主義構造を次々とぶち壊し、人工妊娠中絶、同性愛トランスジェンダーといったLGBTQ(性的少数派)を合法化してきた」

「エバンジェリカルズの指導者たちは、ロシアに反LGBTQの指導的な役割を期待している」

「その神権政治(Theocracy)を確立してもらいたい、そのためにプーチンを支持するという考えなのだ」

「それによって米国内に台頭する非キリスト教的なリベラル勢力に対抗する、というわけだ」

https://www.msnbc.com/opinion/msnbc-opinion/russia-ukraine-crisis-complicates-american-white-evangelicals-love-putin-n1290442

 フランクリン・グラハム師の父親、著名なエバンジェリカルズの指導者、ビリー・グラハム師はかってソ連を「共産主義の悪魔」と呼び、反共、反ソを唱え続けたことを考えると、隔世の感がある。

 フランクリン師は2015年プーチンと会い、長時間会談している。

https://www.ncronline.org/news/politics/russian-connection-when-franklin-graham-met-putin

WNBAの黒人同性愛選手、麻薬保持で拘束

 折しも、ウクライナ侵攻直前にロシア入りした女子プロバスケットボールWNBAブリトニーグレイナ―選手(フェニックスマーキュリー所属=31)がモスクワ・シェレメチェボ空港で、麻薬保持容疑で拘束された。

 携行していた電子タバコカートリッジの中から見つかったという。

 WNBCの各チームは、オフに毎年ロシアで親善試合をすることが多い。同選手の訪ロもそれが目的だった。

 ロシアは麻薬取締りが厳しい。有罪判決を受ければ、懲役10年禁固刑だ。

 同選手は黒人。しかも同性愛主義者であることを公言してきた。ロシアでは同性愛はご法度。

 ウクライナ戦争が続く中でロシア側が同選手をどう扱うか。当然、停戦交渉の取引材料にしてくるかもしれない。

 米スポーツ界は強い関心を示している。

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ロシア産原油などの輸入禁止を発表するジョー・バイデン大統領(3月8日、写真:AP/アフロ)

(出典 news.nicovideo.jp)

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