ほんと?『焦げた物を食べるとガンになる』

ほんと?『焦げた物を食べるとガンになる』

ほんと?『焦げた物を食べるとガンになる』

パンや肉を焼いた時にできる「 焦げ」は、熱によってアミノ化合物や糖が メイラード反応という複雑な化学反応を起こすことによって発生し、褐色物質や香気成分の生成が行われます。

あまりにも焦げすぎだと苦みが強すぎて食べるのが大変ですが、少し茶色くなった程度の適度な焦げの香ばしさを好む人も多く、炊飯器の中にはわざと焦げを作る機能を持つタイプもあります。

ところが、メイラード反応で生成される化学物質の中には、 アクリルアミド・ ヘテロサイクリックアミン(複素環式アミン/HCAs)・ 多環芳香族炭化水素(PAHs)といった人体に有害な影響をもたらす可能性があるものも存在しているとのこと。

HCAsとPAHsは一般的に肉の調理中に発生し、タンパク質・糖・脂肪の結合によって、あるいは炭に肉汁が落ちた時の煙によって生成されます。

一方、アクリルアミドは焙煎(ばいせん)したコーヒーからフライドポテト、タバコの煙といったあらゆるものに含まれています。

これら3つの化学物質が体内に取り込まれると、細胞のDNAを破壊して危険な突然変異を引き起こす可能性があるとのことで、これが「焦げた食材には発がん性物質が含まれる」と言われる理由となっています。

実際、2017年には イギリス食品基準庁がトーストやポテトの焦がしすぎをやめさせるため、真っ黒ではなく金色くらいの焦げにとどめることを推奨する「 Go for Goldキャンペーン」を展開しました。

ところが、 アメリカ国立衛生研究所のがん研究所で主任研究員を務める Rashmi Sinha氏によると、食品の焦げが本当にがんのリスクを高めるのかどうかを判断するのは、思われているより難しく複雑な問題だとのこと。

確かに、HCAsとPAHsはサルを含む動物実験においてがんの発症に関与していることが 示されており、アクリルアミドはげっ歯類を使った動物実験で発がん性が 確認されています。

しかし、これらの結果を人間の臨床試験で確認することはロジスティクス的にも倫理的にも困難なため、「動物においてはがんの発生に寄与するものの、人間においては明確なことが言えない」というのが実情だそうです。

Sinha氏は、「(人間における焦げと発がん性物質に関する)主な研究は、健康な被験者にどのように食品を調理しているのかについて質問し、10年、15年、20年と追跡調査を行って、がん患者になった人とそうでない人を比較して、食品の調理法と何か関連があるかどうかを調べるものです」と説明しています。

つまり、あくまでも調理法とがんとの関連を調査するものであり、「特定の物質ががんを引き起こす」ことを証明するものではないというわけです。

もちろん、「健康な被験者を2つのグループに分けて、一方には発がん性物質があると疑われる焦げがたっぷりの料理を食べさせ、もう一方には焦げのない料理を与える」という非倫理的な研究をすることもできないため、研究ではせいぜい調理法とがんの相関関係を示すことしかできません。

アクリルアミドについては人間において複数の観察研究が行われていますが、その結果はまちまちだそうで、アクリルアミドが全くがんに関与していないと結論づけているものもあれば、発がん性が疑われると結論づけているものもあるとのこと。

同様に、「どれほどの量までなら安全に焦げを食べられるのか?」という基準を知ることも、食品の種類によって大きく違う可能性があるため、回答するのが困難だそうです。

しかし、現状では明確な回答が出せないとはいえ、科学者らは焦げに含まれる化学物質と発がん性の関連について、新たなアプローチから研究を進めています。特にSinha氏が「興味深い」としているのが、人間の血液や尿に含まれるバイオマーカーを利用する手法です。

人体のバイオマーカーを用いることにより、被験者が摂取したアクリルアミドやHCAs、PAHsの量を正確に測定することが可能となり、化学物質とがんの関連をより正しく見極められると期待されています。

Sinha氏は、依然として焦げと発がん性について明確なことは言えないとしながらも、極端に強火で肉・野菜・パンなどを調理するのを避けることで、潜在的なリスクを避けられると主張。真空調理法を使って風味を固定したり、食べ物が黒くなりすぎないように気を付けたりすることを推奨しました。

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